定期接種も、任意接種も、すべて必要なワクチン。「任意」【コドモカルテ/小児科専門医 森戸やすみさん】

2026年6月25日

子どもの病気やケガは、いつも突然やってきます。
それは、子どもは大人のミニチュアではないから。
子どもの体や病気を知って、安心して子育てを楽しもう。

「こんな時どうする?」
小児科医が教える病気のケア

【2026年5-6月号掲載】

定期接種も、任意接種も、すべて必要なワクチン。「任意」という名前に惑わされないで

難聴を起こすことがあるおたふく風邪も「任意接種」

赤ちゃんや子どもはたくさんのワクチンを接種しますね。ただ、ワクチンには「定期接種」と「任意接種」があるので、保護者によっては、「定期接種は必要だけど、任意接種は受けても受けなくてもどちらでもいいということ?」と迷う方もいるでしょう。

結論からいうと、「定期接種」も「任意接種」も、どちらも必要なワクチンです。基本的には予防接種法に基づいて公費で実施されるのが「定期接種」、それ以外が自費で接種する「任意接種」です。しかし、日本では「任意接種」になっている、おたふく風邪ワクチンや高齢者以外のインフルエンザワクチンなども、世界の多くの国では、公的制度によって無料で受けられるワクチンです。

科学的な根拠があって分けられているのではなく、任意接種のワクチンが「任意」のままなのは、予算の都合によるものなのです。

たとえば、おたふく風邪ワクチンについて、WHO(世界保健機関)は「どの国に住んでいても、どんな経済状態でも受けるべき」と表明していますが、日本では任意接種なので、接種率は低いままにとどまっています。

そのため、おたふく風邪の患者さんは一年中います。おたふく風邪自体は重い病気ではありませんが、難聴や髄膜炎、精巣炎といった合併症を起こすことがあります。特に難聴については、100~200人に1人に見られ、そのうち1%は両耳の難聴になるという調査結果もあります。

「接種さえしていれば」定期接種化でヒブ髄膜炎は激減

小児科医をしていると「ワクチンさえ接種していれば」と悔しく思うケースに出会います。

たとえば、ヒブ(ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型)は、日本にワクチンが導入される前には、年間600人に細菌性髄膜炎を起こしていました。私自身も、ヒブ髄膜炎にかかった0歳の赤ちゃんを診て、「残念ですが、一般的には、3分の1は亡くなり、3分の1は後遺症を残します」とお話ししたことがあります。

このヒブですが、ヨーロッパから20年遅れて2013年にワクチンが定期接種になり、その後2024年には、従来の4種混合ワクチンにヒブワクチンを加えた「5種混合ワクチン」が、定期接種として導入されました。

その結果、どうなったでしょう?2014年の厚生労働省の研究では、「ヒブワクチンの定期接種化後に、ヒブ髄膜炎が98%減少した」と報告されています。ワクチンの大切さがわかりますね。

ワクチンを打つ前の赤ちゃんのためにも接種を

地球上には、多くのウイルスや細菌が存在し、感染症もたくさんあります。いつどの感染症にかかるか、合併症が起こるか、後遺症が残るかなどは、誰にも予測できません。ワクチンを打てるようになる前の赤ちゃんや、病気などでワクチンを打てない人たちに感染症をうつさないためにも、ワクチンは必ず受けるようにしましょう。

多くの国では公費で受けられる予防接種が自費のままになっている日本ですが、少しずつ任意接種のワクチンが定期接種化されています。一刻も早く、必要なすべてのワクチンが、定期接種になることを願っています。

教えてくれたのは…

森戸やすみさん<
森戸 やすみさん

小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児集中治療室)などを経て、どうかん山こどもクリニックを開業。
著書は「小児科医ママが今伝えたいこと!子育てはだいたいで大丈夫」等多数

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