部屋の隅にうずくまり、出てこなくなった娘
今の世、子どもの頃に親の子育てを手伝って子守りをして育った、なんて人はほとんどいないでしょう。
子どもの数も減ってきたし、母親が昔ほど家事に忙殺されなくとも済むようになったからでしょうが、おかげで多くの現代の親は自分の子を産んで初めて赤ちゃんを抱くことがほとんどではないでしょうか。
それに子育てしている女性を身近で見る機会もありません。モデルがなく、体験もない。当然、わからないことだらけです。
私の娘も子育てを始めた途端、すぐ育児ノイローゼになり、部屋の隅にうずくまって出てこなくなったことさえあります。
現代の育児は、両親とも、自動車の運転教習をまったく受けずに、いきなり高速道路を運転させられているようなものといってよいでしょう。免許ももちろんとっていません。
当然、誰か助手席にいて、やさしく「そんなに速く走らなくていいんですよ」「そろそろカーブですよ、ハンドル準備しましょう」などと言ってくれることが必要です。
ときどき運転代わりましょうか、とでも言ってくれるとなおありがたい。
育児にもサービスエリアが絶対に必要です
運転助手は無理でも、それに代わるサポーターがいてくれるところ、あるいはときどき運転を休めるサービスエリアのようなところは、その意味で絶対に必要です。
たとえば、子育て支援センターのようなところとか児童館のようなところです。
親子二人だけの息苦しさから、そして私だけで育児をしているという辛さから少しでも開放される場所です。日曜などは夫が主要育児を担当し、妻は買い物に行ってストレスの発散をする、というのもいいですね。
そんなところ、近所にない!という方も多いかもしれません。
でもたとえば、市や町の役所の子育て支援課等に電話してみるのです。そこに繋いでもらって、ともかくそんなところはないか聞いてみましょう。意外と近くにえっ、というところが見つかるかもしれません。
国は、異次元の少子化対策を打ち出していて、例外のない支援を標榜し始めているのです。大事なのは一歩出ることです。
お話を伺ったのは…
汐見 稔幸さん
一般社団法人家族・保育デザイン研究所代表理事。
東京大学名誉教授・白梅学園大学名誉学長・全国保育士養成協議会会長・日本保育学会理事(前会長)。 専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。初代イクメン。父親の育児参加を呼びかけた「父子手帳」の著者。ユーモラスでわかりやすい語り口の講演は定評があり、保育者による本音の交流雑誌『エデュカーレ』編集長や持続可能性をキーワードとする保育者のための学びの場『ぐうたら村』の村長でもある。NHK E-テレ『すくすく子育て』などメディアへの出演も多数。