夏はあせも・とびひが心配です【コドモカルテ/小児科専門医 森戸やすみさん】

2021年7月23日

【2021年7-8月号掲載】

子どもの病気やケガは、いつも突然やってきます。
それは、子どもは大人のミニチュアではないから。
子どもの体や病気を知って、安心して子育てを楽しもう。


「こんな時どうする?」
小児科医が教える病気のケア

夏はあせも・とびひが心配です

「汗をかかないと汗腺が発達しない」って本当?


夏に多い子どもの皮膚病といえば、あせも(汗疹)やとびひ。

あせもは、汗が高温多湿によって蒸発せず、汗腺にたまることでできます。一般によくいうあせもは、「紅色汗疹(こうしょくかんしん)」といって、汗が皮膚の中層の真皮などにたまって炎症を起こし、赤くブツブツした状態になるものです。子どもの場合、胴体や脇、太ももはもちろん、頭や額、鼻の頭などにもよくできます。

あせも予防には、涼しく風通しのよい場所で過ごすことが一番です。子育てをしていると、「子どもにはエアコンより自然の風がよい」「小さいうちに汗をかかせないと、汗腺が発達しない」といった話を見聞きすることもあるかと思いますが、それは間違いです。

30℃の気温が珍しかった昔と違って、今は30℃以上になる日も多く、特に体温調節が未熟な子どもには、自然の風だけでは熱中症になる危険があります。

また、エアコンを付けていても、ずっと室内にいて一歩も出ないことはなく、普通に生活していれば必ず汗をかく機会があります。「そういった生活では、エアコンを使っていても汗腺の数は変わらない」という論文があるのです。家庭内ではエアコンを利用して、快適な室温で過ごしましょう。

そして、汗をかいたらそのままにしないことも大切。最もいいのはシャワーを浴びることですが、洗面台で手足を流したり、タオルで汗を拭く、汗で濡れた服を着替えるだけでも効果があります。

あせもができてしまったら、小児科や皮膚科を受診し、塗り薬をもらいましょう。ステロイドがよく効きます。あせもがある状態では、ベビーパウダーは炎症の原因になることもあるのでやめましょう。



※イメージ写真

 

放っておくと、どんどん広がってしまう「とびひ」


とびひの正式名称は、「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」。

あせも・虫刺され・すり傷などに黄色ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌などが入り込むことでできます。春から夏にかけて多くなるのは、水ぶくれができる「水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)」というタイプ。

水ぶくれは破れやすく、中から浸出液が出てきてジクジクした状態になり、そのままにしておくと感染がどんどん広がるので、小児科や皮膚科に行きましょう。

医療機関では、症状が軽い場合は抗菌薬とかゆみ止めの軟膏、重い場合は抗菌薬の内服薬と軟膏が出されます。患部に軟膏を塗ったら、ガーゼで覆いましょう。

お風呂に浸かるよりも、シャワーだけにした方がいいのですが、石けんは問題ありませんので、清潔を保つようにしてください。

治療中でもとびひの部分をガーゼなどで覆っていれば、登園や登校も大丈夫。ただし、皮膚の状態が悪化したり、他の子どもにうつしたりする場合があるので、プールは控えましょう。

とびひは、「一度かかったらもうかからない」という病気ではありません。肌の清潔を保つ・傷に触らない・発疹はかかないで治療する・爪を短くしておく・手をよく洗うなどで、予防することも大切です。

教えてくれたのは…

森戸 やすみ さん 

小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児集中治療室)などを経て、どうかん山こどもクリニックを開業。
著書は「小児科医ママが今伝えたいこと!子育てはだいたいで大丈夫」等多数。

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