若者とトクリュウ【汐見先生のうまれて、よかった】

2026年9月6日

【2026年7-8月号掲載】

人生で最も大事な心の芯が育つのが乳幼児期



最近、トクリュウなどという聞きなれない言葉がマスコミをにぎわせています。「匿名・流動型犯罪グループ」の略だそうですが、特定のメンバーでトップからの命令で動く犯罪集団とは違い、誰がどこで命令しているのかわからない犯罪集団です。ネット社会が生んだ犯罪集団といえるでしょう。

そのトクリュウの犯罪でなんと16歳の高校生4人が見知らぬ家に押し入り殺人と殺人未遂を犯したという報道がされました。皆さんも覚えておられるでしょう。これはショックでした。

細かなことはわかりませんが、たとえ強く恫喝されていたということがあったとしても、バールやナイフで見知らぬ人を自分の手で殺す、ということは、心のどこかで、やってはいけない!と思わなかったのでしょうか。どうして躊躇しなかったのでしょうか。なぜ警察に訴えなかったのでしょうか。人を殺すよりも、自分が後で責められる方がいいと思わなかったのでしょうか…。

私は、彼らの、いえ、より一般に若者たちの、幼いころの心の育ちに関心があります。人生で最も大事な心の芯が育つのが乳幼児期です。この時期に、人から深く愛された!失敗しても咎められずに心配してもらった、お祖母ちゃんの世話をしたら喜んでくれた、生き物の世話が好きになった等々の経験をたくさんしていれば、長じて面白くないことがあっても、どうせ俺なんか!という手前でブレーキがかかるのではないか、と思うのです。

平和は人の心に築くもの



どうした体験をすれば、大きくなった時に自分をダメにしたり、人を殺めたりすることをしなくなるか、これはわかりません。
でも人間は人からやさしくされた分だけ人にやさしくなれる動物ではないかと思うのです。


昔モンテッソーリは、平和は人の心に築くものといいました。意見対立や面白くないことがあっても、そこで相手を暴力でやっつけない、それが大事だと思う心を育てることが平和教育だといったのです。
このひそみに今こそ習うべきだと強く思います。

お話を伺ったのは…

汐見 稔幸さん
汐見 稔幸さん

一般社団法人家族・保育デザイン研究所代表理事。
東京大学名誉教授・白梅学園大学名誉学長・全国保育士養成協議会会長・日本保育学会理事(前会長)。 専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。初代イクメン。父親の育児参加を呼びかけた「父子手帳」の著者。ユーモラスでわかりやすい語り口の講演は定評があり、保育者による本音の交流雑誌『エデュカーレ』編集長や持続可能性をキーワードとする保育者のための学びの場『ぐうたら村』の村長でもある。NHK E-テレ『すくすく子育て』などメディアへの出演も多数。


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