【2026年5-6月号掲載】
子どもをともかくも自然の中へ!
「森のようちえん」というような名前で、子どもたち、特に幼児たちを自然の中で遊ばせる実践が広がっています。
専門的には「自然保育」というようですが、今年の10月には長野県で、そうした実践をしている人が1000人規模で集まり、集会、交流会が開かれる予定です。
子どもたちを自然の中で遊ばせることがなぜ大事なのか。理由はいろいろあるのですが、最大の理由は、人類は、この世に生まれてほぼ二十万年の間、ずっと自然の中で暮らし、生きてきたから、ということです。
朝起きたら新鮮な空気を吸い、冷たい水で顔を洗い、近隣の自然の中で食べ物を探し、木を切って燃やして火を得、ときに自然の中の生きものを探して殺して食べ、…と、すべて自然の中で、自然を相手に、自然とかかわりながら、そのいのちを営んできたのです。季節を実感し、暑さに耐え、寒さをしのぎ、それに適応するからだを育ててきたのです。夜の星に感動し、そこに物語を紡ぎ出してきたのも、自身が自然である人間が、より大きな自然に包まれ一体化したい、という願望があったからでしょう。
自然の中で遊ぶと、とてもきめ細やかな筋肉の動きが求められますし、いっしょに挑戦して何かを達成すると、コミュニケーション力が育つだけでなく、子どもの生命機能という深いレベルの働きがお互いに共鳴して、いっしょに生きていることをうれしく思うようになります。
外の自然に内臓等も感応して生命機能の活性化のために動いていることが今は確かめられています。
自然の中での遊び、活動が、子どもの中の自然を活性化し、生きることを深いレベルで喜びに感じやすくなるのです。
残念ながら、今、子どもの暮らしの中から自然が急速に消え、人工的なものとの出会いが子どもの人生になってきています。でもそれでは子どもの命が自然の命と共鳴し合い、自然を無意識に大切にする人間には育ちにくくなります。
子どもをともかくも自然の中へ!これが今の大事なスローガンですね。
お話を伺ったのは…
汐見 稔幸さん
一般社団法人家族・保育デザイン研究所代表理事。
東京大学名誉教授・白梅学園大学名誉学長・全国保育士養成協議会会長・日本保育学会理事(前会長)。 専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。初代イクメン。父親の育児参加を呼びかけた「父子手帳」の著者。ユーモラスでわかりやすい語り口の講演は定評があり、保育者による本音の交流雑誌『エデュカーレ』編集長や持続可能性をキーワードとする保育者のための学びの場『ぐうたら村』の村長でもある。NHK E-テレ『すくすく子育て』などメディアへの出演も多数。