大切なのは答えを教えない、押しつけないこと【子どもと向き合う/河野 哲也さん】

2022年6月27日

【2017年8月号掲載】

答えは見つからなくていい、
一緒に考えることで
子どもも、親も成長しますよ



子どもの「なんで?」「どうして?」に、 親は答えに困ったり、面倒でつい、ごまかしちゃったり。 本当はどう答えてあげたらいいのでしょうか?

大人と子どもの哲学探究「こども哲学」を実践する、 NPO法人「こども哲学 おとな哲学 アーダコーダ」の 副代表理事 河野哲也さんにお話を伺いました。

もくじ

1.「こども哲学」とはどういうものでしょうか?
2.大人はどのように関わるのでしょうか?
3.ママたちにエールをお願いします
4.教えてくれたのは

「こども哲学」とはどういうものでしょうか?


たとえば「どうして勉強するの?」「心はどこにあるの?」といった正解のない問いについて、大人と子どもが話し合い探究していく学びの場です。

子どもの思考力とコミュニケーション力を育む哲学教育として、世界の教育現場で実践されています。

「子どもがそんな難しいことを考えられるの?話せるの?」と思われるかもしれませんが、ゆっくり、じっくりと話し合う場をもうければ、それこそ、幼稚園・保育園の子どもでも大人に負けないくらい物事を深く考えられるし、鋭い発言をしますよ。普段はおとなしい子どもが誰よりも活発に発言して、驚かされることもよくあります。

本当は、子どもはいろいろなことを考えていて、話したい気持ちもいっぱいあるのに、私たち大人が抑えこんでしまっているだけではないかなと思います。

大人はどのように関わるのでしょうか?


こども哲学では、大人も子どもと対等な立場で考えます。重要なのは、大人が教えようとしない、答えを誘導しないこと。

「なぜ、勉強するの?」という問いに、「将来役に立つからよ」などと返すのは、勉強をさせたい大人の下心。子どもは答えがわかっていたり、押しつけられたりすると興味を失い、考えなくなります。大人も思いこみを捨てて「そういえばどうしてかな?」とゼロから考える。

その問いかけが大人もわからない、どこへ行きつくかわからない「冒険」となった時、子どもは探究心にかりたてられ、考えることに夢中になっていくのです。

子どもは「これってどういうこと?」「なぜだろう?」と考え続けることで思考力をつけ、自ら考え判断し、行動できるようになります。

また、対話を通して人の話を聞き入れることを学び、意見が異なる人たちとも信頼関係を築いていける、本当の意味でのコミュニケーション力を身につけていきます。私はこうした力こそが、未来をつくっていく子どもたちに、最も必要な力だと思いますよ。

家庭でも「なんで?」「どうして?」と聞かれたら、一緒に考えてあげてほしい、子どもの聞きたい気持ちに応えてあげてほしいなと思います。答えは見つからなくてもいい、一緒に考えることで、子どもも、親も成長しますよ。

あとは何より、答えがわからない世界を冒険する自由さ、おもしろさを、親子で楽しんでしまうのが一番です。

ママたちにエールをお願いします


親はつい「あれも、これもやらせなくては」と焦ってしまうのですが、親が思う以上に、子どもは自分でもよく考えているし、がんばっています。

子どもを信じて、ゆっくりと待ってあげましょう。真の愛は待つこと、だと思いますよ。

教えてくれたのは

河野 哲也(こうの てつや)さん

河野 哲也(こうの てつや)さん 

慶応義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。立教大学教授。NPO法人「こども哲学 おとな哲学 アーダコーダ」副代表理事。子どもから大人までの幅広い層に、哲学の自由さと楽しさを広める活動に取り組む。


子どもの哲学
考えることをはじめた君へ
子どもの哲学


著/河野哲也・土屋陽介・村瀬智之・神戸和佳子
発行/毎日新聞出版


「友達はたくさんつくるべき?」「“ふつう”ってなに?」「どうして病気になるの?」…小学生からの問いについて、哲学者たちが子どもたちと一緒に考え進めていく形で書かれた本。パパ・ママも、子どもの頃に考えていた“あの問い”を、また考えたくなるかもしれません。

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