患者が急増。感染力が非常に強く、恐ろしい病気、はしか【コドモカルテ/小児科専門医 森戸やすみさん】

2026年8月14日

子どもの病気やケガは、いつも突然やってきます。
それは、子どもは大人のミニチュアではないから。
子どもの体や病気を知って、安心して子育てを楽しもう。

「こんな時どうする?」
小児科医が教える病気のケア

【2026年7-8月号掲載】

患者が急増。感染力が非常に強く、恐ろしい病気、麻疹(はしか)

昔は子どもの「命さだめ」と呼ばれて恐れられた

5月現在、海外からの帰国者・入国者や集団感染事例によって、麻疹(はしか)の患者が急増しています。今年2026年に入ってから5月17日までに、日本国内で報告された患者は498人となり(※1)、過去10年間で最多だった2019年に迫る勢いです。

まず、麻疹(はしか)とはどんな病気でしょうか?麻疹ウイルスが引き起こす感染症で、その感染力は非常に強く、すれ違っただけで感染することもあります。また、10日前後の潜伏期間があるので、感染に気づかないままウイルスを広めてしまうこともありえます。

感染すると発熱と風邪のような症状が出ます。その後熱は一旦下がり、口の中に白い発疹が出て、再度発熱、全身に赤い発疹が広がります。
治療法は対症療法しかなく、感染者の30%は肺炎や脳炎などの合併症を起こし、現在の日本で適切な治療をしても1000人に1人は亡くなります。
その昔は、子どもの生死を分ける「命さだめ」と呼ばれて恐れられた病気です。

また、「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」という病気になることもあります。SSPEは、幼い頃に麻疹(はしか)にかかり、その場では完治したように見えた子どもの中から2~10年後くらいに発症します。元気だった子が、知能が低下したり、性格が変わったり、歩けなくなったりする難病で、有効な治療法はありません。

「1歳」と「年長」の大切な2回のワクチン

このように恐ろしく、根本的な治療法はない麻疹(はしか)ですが、感染しないための予防法はあります。
それが、ワクチンです。

麻疹(はしか)を予防するワクチンは、MRワクチンと呼ばれる、風疹との混合ワクチンです。定期接種では、「1歳」と「小学校入学前の1年間」の2回、受けることになっています。満1歳になったら、また、年長児になったら、早めに受けるようにしましょう。

また、保護者にも注意が必要です。麻疹ワクチンが定期接種になったのは1978年からで、しかも当初の接種は1回のみでした。2回接種が始まったのは2005年です。
1回の接種では十分な抗体ができていないことがありますし、2回接種していても数十年経つと抗体値は下がってしまいます。ですので、心配ならぜひワクチンを接種してください。抗体値を検査せずに接種しても、問題ありません。費用は自費で1万円〜1万4千円程度です。

福島県以外は、目標の95%以上に達していない

日本は2015年に世界保健機関(WHO)から、「麻疹(はしか)が排除された国」と認定を受けました。
麻疹(はしか)は感染力が強いので、この排除状態を維持するためには、1回目・2回目ともに「95%以上」のワクチン接種率が必要です。
しかし、最近接種率が下がっており、目標に達していません。2024年度のMRワクチン接種率は、全国平均で1回目(1歳児)は92・7%、2回目(年長児)は91・0%でした(※2)。都道府県別に見ると、接種率で95%を達成しているのは、福島県の1回目のみで、他都道府県はすべて目標を下回っています。  まだワクチンを打つ前の赤ちゃんたち、また持病などでワクチンを打てない人たちを守るためにもぜひワクチンを接種しましょう。

※1 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト 感染症発生動向調査
※2 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト 令和6年度麻しん風しん定期予防接種の実施状況の調査結果について

教えてくれたのは…

森戸やすみさん<
森戸 やすみさん

小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児集中治療室)などを経て、どうかん山こどもクリニックを開業。
著書は「小児科医ママが今伝えたいこと!子育てはだいたいで大丈夫」等多数

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