「免疫」を高める方法を教えて!【コドモカルテ/小児科専門医 森戸やすみさん】

2022年2月5日

【2022年1-2月号掲載】

子どもの病気やケガは、いつも突然やってきます。
それは、子どもは大人のミニチュアではないから。
子どもの体や病気を知って、安心して子育てを楽しもう。


「こんな時どうする?」
小児科医が教える病気のケア

「免疫」を高める方法を教えて!

「免疫を高める」と証明された
 食品や方法はありません


「こんな食品を食べると免疫力が上がる」「子どもは薄着で免疫を高めた方がいい」といった言葉を耳にしたことはありませんか?そんな話を聞いた時は、眉唾だと思った方がいいでしょう。

そもそも「免疫」とは何でしょうか。簡単にいうと、「免疫」とは、体に入ってきた自分以外の「異物」を認識して排除する働きのこと。免疫には、赤ちゃんがお母さんの胎盤や母乳からもらう「受動免疫」、もともと体に備わっている「自然免疫」、さまざまな病気になりながら自分で抗体をつくる「獲得免疫」の3種類があります。

3つの免疫のうち、お母さんからもらう受動免疫は、生後6カ月頃にはなくなります。だから、それ以降はいろいろな感染症にかかる赤ちゃんが増えるのですね。

では、免疫はどうやったら高めることができるのでしょうか。現在のところ、「免疫を高める」と証明されている食品や方法はありません。何かを食べても、薄着で過ごしても、免疫を高くすることはできませんから、もしそういった宣伝をしている場合は、疑ってかかった方がいいでしょう。



※イメージ写真

 

新型コロナ対策のおかげで、
子どもの免疫が育たない?


一方、免疫のうち、獲得免疫は、病気にかかりながら自分で獲得していくものです。

新型コロナウイルス感染症の対策として、人との距離を取ったり、マスクや手洗い、消毒が広がったことで、子どもがよくかかる風邪や突発性発疹、手足口病なども減りました。

こういった一般的な感染症が流行しないことで、「子どもが風邪を引かずに大きくなると、獲得免疫ができないのでは?」と不安になる保護者もいます。ですが、心配しなくても大丈夫です。

百日せきやRSウイルス、インフルエンザなど、大部分の感染症は、年齢・月齢が低いうちにかかる方が重症化しやすいのです。

特に、RSウイルスは、初めての感染が重くなりやすいことで有名です。RSウイルスは、多くの子どもが3歳になるまでに1回はかかる感染症です。その1回が1歳未満だと、入院したり長引いたりする可能性が高くなりますが、2歳以降だと比較的軽く済みます。

定期接種のワクチンが、生まれて間もなくから始まるのも、そのためです。小さいうちほど病気にかかると大変なので、予防接種で早く免疫をつけてあげるのです。
 

ワクチンで防げるものは
ワクチンで防ごう


このように見てくると、風邪などの感染症にかからずに育ち、大きくなってから初めて風邪を引いたとしても、特別に心配することはないとわかるでしょう。だいたいの感染症は、5歳未満でかかることが重症化のリスクになります。

ただし、中には水痘(水ぼうそう)やおたふく風邪のように、大人になってからの方が重症化や合併症のリスクが高い感染症や、麻疹(はしか)のように大人がかかっても死亡率が高い恐ろしい感染症もあります。どちらにしても、ワクチンのあるものは、ワクチンで防ぐことがとても大切です。



※イメージ写真
 

教えてくれたのは…

森戸 やすみ さん 

小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児集中治療室)などを経て、どうかん山こどもクリニックを開業。
著書は「小児科医ママが今伝えたいこと!子育てはだいたいで大丈夫」等多数。

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