服や靴、ランドセル……子どもが身につけるものの色の中で、最もさまざまな感情を呼び起こしやすいのは、ピンクではないでしょうか。なぜ私たちはピンクに特別な印象を抱くのでしょう?「ピンク」をテーマにした絵本を描いた、1児の母でイラストレーターのなかむらるみさんにお話を聞きました。
【2026年5-6月号掲載】
「ピンクは魅力的な色」と伝える絵本がつくりたくて
この絵本をつくろうと思ったのは、娘が生まれる前です。
幼少期からピンクが好きでした。キキララのタオルケットがお気に入りだったり、ピンクの靴が欲しかったけど、買ってもらえなかったり。大きくなって、ピンクってダサいなと思った時期を経て、ピンクのハンカチを持つと気持ちが明るくなるな、と好んで身につけたりしていました。
イラストレーターの仕事を始めてからは、画面の中でピンクを一番最初に塗ることが多くて。そうすると、パッと画面が生きてくる気がするんです。
そんな中、ピンクは“女の子の色”だとか“かわいい色”だとか、ジェンダーの問題に引き合いに出されるのが多いことに「もったいないな」と感じて、ただただ「ピンクは魅力的な色だ」と伝える絵本がつくりたいと考えました。
母がピンクの靴を買わなかった気持ちが、親になってわかった
ところが、絵本の制作を進める中で、娘が生まれたことによって、気持ちに変化がありました。世の中の親がピンクにモヤモヤしたり、自分の母親がピンクの靴を買ってくれなかった複雑な気持ちも、少しずつわかってきました。
娘はピンクが大好きで、特に年中の頃は、メガネも服も靴もピンクで、全身ピンクという時期がありました。
そうすると、「他の色も着たら?」とか「さすがに飽きないのかな?」と気になったりします。娘はピンクのかわいい面だけに惹かれているのではないか、ステレオタイプにはまっているのではないか、という気持ちも湧き起こってきました。そんな気持ちも絵本制作の原動力になったと思います。
とはいえ、娘は6歳になると「ピンクは赤ちゃんの色」と言い出して薄紫好きになり、その後はミントグリーン、9歳の今では水色が好きになっているのですが。
“ピンク=女の子”は日本に昔からあったイメージではない
調べてみると、日本でピンクが“女の子の色”になったのは、1950年代のアメリカにおけるピンクの流行がひとつのきっかけのようでした。
カラーテレビやカラー印刷の普及も相まって、ピンクが“豊かさ”や“女性の幸せ”の象徴として広まり、その影響を日本も受けたらしいのです。日本で“ピンク=女性・女の子”というイメージができたのもここ70年ちょっとの見方ですし、世界全体で見れば日本やアメリカ、ヨーロッパなど、一部の地域の感覚なんですね。
絵本をつくってからしばらく経ちました。私としては、ピンクはかわいい色で、それは変わらなくて。
でも、最初はかわいい面だけに固執していたけれど、今は多様な面があることを知っています。
ピンクは、ポジティブでやる気を起こさせる色でもあるし、生命の色でもあります。スーパーに行くと、お肉もピンクだと気づくし、舌の色もピンクです。化粧品にも多く使われています。絵本の表紙に描いたように、夕日もピンクに見える日があります。
“かわいい”だけじゃない、ピンクの魅力も知ってほしい
保護者の皆さんにも、ピンクが好きだったり、嫌いだと思ったり、あまりにも子どもが好きで困ったり、そんな揺れ動く気持ちがあるのではないでしょうか。
絵本を読んでもらった方には、“かわいい”以外のピンクもたくさんあるということが少しでも伝わって、自分だけのポジティブなピンクを見つけてもらえたら、と思います。
今回お話を伺ったのは…
なかむらるみさん
1980年生まれ。イラストレーター。9歳の母。武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科卒業。普段は書籍や雑誌などのイラストを担当。著書に『おじさん図鑑』(小学館)などがある。
かっこいいピンクをさがしに
ピンク色は、今の日本では“かわいい色”“女の子の色”といわれるけど、それってほんと?さまざまな分野の専門家に「ピンク」をテーマにお話を聞いていく、ルポルタージュ絵本。
なかむら るみ 文・絵、福音館書店