【2018年8月号掲載】
妊娠出産を撮る写真家として活躍し
2児のママでもある江連麻紀さんに、
写真のこと、子どもとの向きあい方を伺いました。
もくじ
1.出産写真を撮るときはどんな想いですか?
2.お子さんの写真はどんな時に撮りますか?
3.江連さんも子育てに悩むことはありますか?
4.読者にメッセージをお願いします
5.教えてくれたのは
出産写真を撮るときはどんな想いですか?
どんな出産も、撮るたびに毎回、感動します。命がけで新しい命を産もうとしている女性は、本当にきれいでかっこいいし、産婦さんを支える家族や助産師さんの真剣で優しい表情、生まれたときのみんなの輝くような笑顔も最高で。
写真を見て、子どもが「こんな風に産んでくれたんだ」と思ったり、出産に痛い・怖いイメージを持つ人が「出産ってこんなにハッピーなことなんだ!」と気づいたりしてもらえたら、うれしいです。
私は他に、「里親家庭・ファミリーホーム・養子縁組家族」「精神障害等を抱えた当事者」の方たちも撮影しています。その中で気づかされたのは、辛く苦しい中にも、幸せの種や希望はあるということ。そのことをみなさんにも伝えたい、生きにくさを抱えた人たちが、少しでも生きやすくなる写真を撮りたいなと思っています。
お子さんの写真はどんな時に撮りますか?
特別な時より、日常を撮るようにしています。息子がひじきの煮物を床にまき散らしたのを「派手にやったねー!」とシャッターを切ったり、喧嘩して娘が怒り泣きする顔を、思わず「かわいい♪」と撮ったり(笑)。日常を残すようになったのは、里親家庭の撮影を通して、その大切さを教わったから。
里親家庭では、様々な事情から生みの親と暮らせない子どもたちを養育しています。ネグレクトや虐待など、いろいろな子どもがいますが、そこでの暮らしは、どの家庭にもあるような、ありふれた日常なんです。
「今夜はチャーハンだけ」と手を抜くこともあるし、お父さんが気持ち良さそうに酔っぱらうことや、時には「家の中がピリピリしてる。お父さんとお母さん、ケンカしたかな?」ということもあります。
子どもはそんな日常の中で、親のだらしない姿を見て「大人も完璧じゃないんだな」「時には手を抜いても、気を緩めてもいいんだ」ということを学んでいくし、家の中の空気を感じとりながら、人との関わり方も身につけていきます。
「子どもたちは特別なことを望んでいない。ご飯を食べて、笑って、慰めあって、ケンカして、ぶつかっても信じあえて、安心して眠って、一緒に生きていくのが幸せなこと」という里親さんの言葉に、私もふーっと肩の力が抜けました。
特別なことはなくても、親がちゃんとしていなくたって大丈夫。子どもにとって本当に大切なのは、家族と毎日安心して過ごせる「日常」なのだと思います。
江連さんも子育てに悩むことはありますか?
長女が小さいときは、一人で全部抱えこみ余裕がなく、イライラが爆発することもよくありました。
今は「何かあったら、あの人に相談しよう」「落ちこんだら、友達に愚痴を聞いてもらおう」と思えるから、とても楽です。そうなれたのも、写真を通して、人が助けあう姿をたくさん見ることができたから。
たとえば、産婦さんも一人で産むわけではなくて、「もうできない」と弱音を吐くのを「辛いよね」と支えて励ましてくれる助産師さんや家族がいるから、乗り越えていけるんですよね。弱いから人はつながれる、助け合えるんだと気づいたら、自分の弱さを素直に出せるようになりました。
子育てで一番辛いのは、一人で頑張ること。一人じゃないと思えるだけでも安心でき、子育てを楽しめるようになります。みんなが、助けあい、楽しみながら子育てをしていけたらいいなと思います。
読者にメッセージをお願いします
安心してさぼりましょう。大事なのは「安心して」ということ。「今日はしんどいから、ちょっとさぼるね。明日は復活するから」と正直にさぼる理由を伝えれば、相手も「そういうことあるよね、OK!」と受けいれてくれるし、フォローし合えるようになりますよ。
弱さをオープンにして、お互い安心してさぼりましょう(笑)!
教えてくれたのは
写真と言葉でつむぐプロジェクト
発行:フォスター
2017年夏に開始した、日本初の里親家庭・ファミリーホーム・養子縁組家族の写真展とトークイベントのプロジェクト。江連麻紀(写真家)、白井千晶(社会学研究者)、齋藤麻紀子(NPO法人Umiのいえ代表)3人によるチーム。ありのままの日常を切り取り、家族とは何かを投げかける。写真展とイベントが全国を巡回中。http://foster-photo.jp