育児の情報が正しいかわからない【コドモカルテ/小児科専門医 森戸やすみさん】

2024年4月21日

【2024年3-4月号掲載】


子どもの病気やケガは、いつも突然やってきます。
それは、子どもは大人のミニチュアではないから。
子どもの体や病気を知って、安心して子育てを楽しもう。

「こんな時どうする?」
小児科医が教える病気のケア

もくじ

  1. 育児の情報が正しいかわからない
  2. 教えてくれたのは…

育児の情報が正しいかわからない

スマホですぐに検索できるインターネットの育児情報はとても便利ですが、中には裏付けのない情報もあります。

そこで、保護者の皆さんが「この情報は変だな?」「間違っているかも」と気づくためのチェックリストを用意しました。ひとつずつ見ていきましょう。

①「~と言われています」

たとえば、こんな文章が書かれているサイトがあります。

「妊娠中に骨盤ベルトをすることで子宮の形が良くなり、早産になりにくく、生まれた子も育てやすくなると言われています」

 まるで誰かが根拠を持って言っているかのような文章ですが、医学的にはエビデンスのない、正しくない情報です。

子宮は体内の深い場所にあるので、ベルトを巻いたくらいで形は変わりませんし、ベルトを巻いても早産の予防にはなりません。

また、育てやすさとの関連は証明されていません。
「~と言われています」「~だそうです」などの伝聞表現があったら気をつけましょう。

②「~は、第二の○○」

「足は、第二の心臓」「皮膚は、第二の排泄器官」などの言葉を目にすること、ありますよね。このような表現はとてもキャッチーで面白く、目を引きます。

でも、これらの表現は正確とは言えません。各臓器は連携しあっているので、足と心臓はまったく無関係ではありませんが、足は足です。

ましてや「だから、健康になるにはふくらはぎを揉むだけでいい」まで行くと極論です。
キャッチーな表現には注意しましょう。

③偏った情報を何度も見る

子育てについて、意識して幅広い情報にあたっているようでも、実はそうではないかもしれません。
同じ内容でも媒体によって少しずつアレンジするので別の記事に見えますが、結局は同じ情報が出どころ、ということがあるのです。

たとえば、「ワクチンは効果なし」「ステロイドは危険」といった、現代の医学では標準的ではない情報を何度も目にしていると、徐々に信念が深まっていきます。

「○○は危険」という記事に出合ったら、「○○は安全」という記事も一緒に読むようにしてください。

④「正解」があると思い込む

私は長く小児科医と保護者を続けていますが、「子育てに正解はない」とよく感じます。

病気も育児も、まだまだわからないことだらけです。
だからこそ「子どもが寝ない」「食べない」と子育てに悩みは尽きないのですが、そんなときに「この方法なら、絶対寝ます!」「食べます」「治ります」と言われると信じたくなりますよね。

でも「絶対」という言葉には要注意。

その子の状況もわからないまま断言するのは不誠実で、信用に値しない姿勢だと思います。

⑤「自然=◎、人工=×」

ネットでは「自然のものは良く、人工物は悪い」という考えに基づく誤った情報を多く見ます。

たとえば、「合成界面活性剤が使われた紙オムツがオムツかぶれの原因、自然な布オムツを使いましょう」と言われたりします。

でも、オムツかぶれは、吸収体などがない布オムツの方が起こりやすいのです。

ですから、赤ちゃんのオムツかぶれで受診した保護者には、治るまでは紙オムツを勧めています。

現代より自然のものを使っていた時代は、乳幼児の頃に亡くなる子がたくさんいました。わざわざ昔に戻る必要はありません。

「自然=◎、人工=×」という考えに惑わされないようにしましょう。

教えてくれたのは…

森戸やすみさん<
森戸 やすみさん

小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児集中治療室)などを経て、どうかん山こどもクリニックを開業。
著書は「小児科医ママが今伝えたいこと!子育てはだいたいで大丈夫」等多数

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