スマホ育児はダメと聞きました【コドモカルテ/小児科専門医 森戸やすみさん】

2021年6月21日

【2021年5-6月号掲載】

子どもの病気やケガは、いつも突然やってきます。
それは、子どもは大人のミニチュアではないから。
子どもの体や病気を知って、安心して子育てを楽しもう。


「こんな時どうする?」
小児科医が教える病気のケア

スマホ育児はダメと聞きました

「スマホを見ている=遊んでいる」ではない


2017年、日本小児科医会が「スマホに子守りをさせないで!」というポスターをつくりました。

ポスターには、大きなバツのマークとともに、
「ムズがる赤ちゃんに、子育てアプリの画面で応えることは、赤ちゃんの育ちをゆがめる可能性があります」
「親がスマホに夢中で、赤ちゃんの興味・関心を無視しています」
などの例が載っています。


私はこれを見て、「スマホを禁止しようとする人たちは、お母さんやお父さんが自分の楽しみのためだけにスマホを見ていると思っているのだな」と感じました。

多くの親は必ずしもスマホで遊んでいるわけではなく、「母乳は足りている?」「うんちの回数は1日に何回くらい?」など、育児情報を調べていることもあるでしょう。
スマホには予防接種のスケジュール、身長・体重の記録、お薬手帳のアプリもあります。
「スマホを見ている=遊んでいる」にはならないですね。

また、SNSにちょっとした愚痴を書き込んだり、いろいろな記録としてブログを書いている人もいます。
そういった気分転換をしたとしても悪いことでしょうか。

以前、「病院の待合室で母親がスマホばかり見て、子どもが椅子から落ちることがよくある」という記事を見かけましたが、私の周囲では半年に1回あるかないか。
かつては雑誌を読んでいて子どもが転落することが同じようにたまにありました。

雑誌ならよくてスマホはダメなんておかしいですよね。

 

スマホ育児批判は、意味なく保護者を追い詰めてしまう


子どもが少し大きくなると、公共の乗り物や建物内でじっとしてくれなくて困り果てることがあります。
言い聞かせてわかるのは、早くて3歳頃。それでも機嫌が悪ければ、言葉だけで説得するのは無理な相談です。

そういった時に子どもがスマホを見て静かにしていてくれたら、保護者も子どももすごく助かるんですよね。

それなのに、これにもまた「スマホに育児をさせている」と冷たい目を向ける人がいます。


日本小児科医会の「『子どもとメディア』の問題に対する提言」には「2歳までのテレビ・ビデオ視聴は控えましょう」とありますが、必ずしも具体的な医学的研究や調査データに基づいた提言ではないと私は思います。

2歳までの子どもにテレビをほんの少しも見せてはいけない、と考えるのはさすがに極端すぎます。

1歳を過ぎると、子どもは音楽に合わせて体を動かします。
2歳前後で子ども番組に興味を持つことが多いでしょう。


一時的にテレビや動画を見せることに罪悪感を持たなくていいんですよ。

ただ、赤ちゃんの目は未完成で、両目で立体的にモノをとらえられるようになるのは6歳頃といわれています。
目を長時間使いすぎれば、近視になる可能性はあるので注意しましょう。

スマホに限らず、新しいものが持てはやされ、身近な人が自分のわからないものに夢中になると、不安に陥る人がいるのでしょう。

でも、小さな子どもを持つ保護者に根拠のない罪悪感を持たせないように、すべての人に広い心で子育てを見守ってもらいたいものです。

教えてくれたのは…

森戸 やすみ さん 

小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児集中治療室)などを経て、どうかん山こどもクリニックを開業。
著書は「小児科医ママが今伝えたいこと!子育てはだいたいで大丈夫」等多数。

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